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2017/09/01

老後破産で後悔しないために。定年までに住宅ローンを完済するためのコツ教えます。 by 千日太郎

千日太郎

住宅ローンに関するブロガーとして著名な千日太郎さん。過去にお話しいただいた「ボーナス払い ダメ、絶対」「今の低金利時代に定期預金なんて勿体ない?ならば住宅ローンを繰上返済しよう」などが大変好評でした。今回は、最近ニュースなどで耳にすることが増えた「老後破産」に陥らないために、定年までに住宅ローンを完済するコツを伺いました。(いえーる すみかる編集部)

これから家を買おうと考えている30代から40代の人の住宅ローンは定年までに退職金に手を付けずに完済できるような計画を立てる必要があります。少子高齢化で私たちが受け取れる年金の額は年々少なくなり、支給の開始も年々後ろ倒しになっているからです。

今の年金制度では、20歳から60歳まで国民年金に加入した人は60歳で保険料を納め終わり、年金の支給は65歳から始まります。60歳が定年であるという会社が多いですから、60歳で会社をリタイアすると、5年間の無収入期間が生じるんですよね。なので、再雇用制度とか嘱託などでその間を食いつなぐとしても、収入はかなり減ってしまうことが予想されます。大きな会社でもだいたい6割位になってしまうようです。

また、これは「今」の年金制度です。これから先はさらに厳しくなっていくでしょう。今は65歳ですけど、自分たちがその年齢になる頃には70歳からの年金支給になっているかもしれません。支給される金額も今と同じ水準とは思わない方がよさそうです。

以下はある民間企業が「家を買った理由」についてアンケートを行った結果です。
1位 子どもや家族のため家を持ちたいと思ったから 40.3%
2位 現在の住居費が高くてもったいないから 28.5%
3位 金利が低く買い時だと思ったから 25.7%
4位 資産を持ちたいと思ったから 19.9%
5位 老後の安心のため住まいを持ちたいと思ったから 16.5%

5位に「老後の安心」という項目がありますけど、これって定年退職までに住宅ローンを完済し、なおかつ老後の資金が十分に貯められた場合にやっと成立するんですよね。ローンの完済に失敗すると、家を売却しなければならなくなり、老後に住居費の大きな負担がのしかかります。

《持ち家と賃貸の負担の配分の違い》

  持ち家 賃貸
現役時代の負担
(現金とローンの完済)

(毎月の家賃)
老後の負担
(住居費不要)

(住居費必要)

住宅ローンにしくじり家を手放してしまうと、何のための安心だったのか分からなくなってしまうのです。ですから、これから家を買う人は、必ず60歳の定年までに完済した上で老後の貯蓄を残せるような住宅ローンを組む必要があります。

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年齢階層別の平均貯蓄と持ち家率

平均的にはどうやって住宅ローンを完済しているのか?そのヒントとなるのが政府の統計データです。下記は平成28年度の総務省による家計調査報告から千日が作成したグラフです。

(総務省 平成28年度 第8-5表 世帯主の年齢階級別貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高より作成)

持ち家率が高齢者になっても右肩上がりになるのは、高齢者になってから家を購入しているというのではなく、相続による増加だと思われます。

とすると、家を買った人の平均モデルは、以下のように読み取れますね。

✓20代から30代で頭金を貯めて家を買い、
✓10年は住宅ローン控除があるので、40代では繰上返済せず貯蓄を増やし、
✓50代には積極的に繰上返済しつつ老後資金を貯蓄し、
✓60代ではほとんど完済している。

同じ人を追いかけて集計したものではありませんから、誤差はあるでしょうけど概ねこのようなパターンが王道なのでしょう。

60代から70代以降にかけて平均貯蓄が僅かですが右肩上がりに増えていますよね!これは今年金をもらっている人達は年金収入からでも貯蓄しながら生活が成り立っているということでもあります。しかし、我々が年金を受け取る頃には右肩下がりに減っているのではないかと思います。

50歳になってから作るライフプラン(イベント)表、キャッシュ・フロー表はリアルな未来予想図

ライフプラン(イベント)表、キャッシュ・フロー表というものがありますよね。私はアレが嫌いです。基本的に「絵にかいた餅だ」と思っています。

何一つ予想通りに行くわけがないのが人生ですし、前提として置く仮定も多すぎますし、仮定そのものにも合理的な根拠に欠けます。もともとは企業が中期計画などを立案したり、投資意思決定するのに利用している理論をそのまま家計にコピーした代物なんです。

企業財務の専門家が作る中期計画はせいぜい5年です。それ以上の長期の計画は実行性に欠けるので一般にはあまり作られることはありません。それを、なぜか個人の家計については何十年という長期で作って、有難がっている。

ハッキリ言って使えない計画です。「絵に描いた餅」とはどんなに上手に描かれていても、絵に描かれた餅は見るだけで食べられない。 転じて、実際の役には立たないものや、実現する見込みのないものの意味ですから、的確な表現だと思います。

ここからが本題ですが、50歳というのは、定年退職まであと10年ということですね。この10年はそれまでの20~30年間にわたって積み上げたキャリアの延長線上にある10年です。よほどのことが無い限り大きく上がりもしませんし、下がるにしても緩やかです。

つまり、良きにつけ、悪きにつけそこから先の収入が、ある程度の確度をもって予測できる10年だということです。

そして、住宅ローンの残高や支払い条件はもう決まっていますよね。変動金利ならば金利変動がありますが、5年ルールと125%ルールがあります。あと10年の間であれば最大でも125%支払いが増えるだけです。

ですから、50歳になったら定年までの10年間のライフプラン(イベント)表、キャッシュ・フロー表を作ります。今のペースで今後10年過ごしたとして、

  1. 退職金に手を付けずに住宅ローンを完済できるか?
  2. 老後資金を幾ら貯蓄できるか?

が分かります。これは「絵に描いた餅」ではなく、ほぼリアルな未来予想図になるでしょう。

40代までにやっておくべき「転ばぬ先の杖」とは?

50歳でお先真っ暗な未来予想図を見ないで済むようにするための、転ばぬ先の杖とは何か?

定年時の住宅ローン残高と同額の貯蓄です。

50歳の時点でその貯蓄があれば「1.退職金に手を付けずに住宅ローンを完済できるか?」という関門をまずクリアすることが出来ます。その後定年退職までの10年間は「2.老後資金を幾ら貯蓄できるか?」に専念できるのですね。

それに加えて退職金をオンすれば、かなり手厚い老後資金となるでしょう。

30代で幾らの家が買えるか?
40代で幾らの家が買えるか?

この二つの記事は、無理なく転ばぬ先の杖となる定年時の貯蓄を確保するための資金計画の立て方を解説した記事でもあります。ぜひ読んでみてくださいね。

それでも予定どおりに行かない場合はどうすれば良いか?

いくら堅実に貯蓄をしていても、人生は予定通りに行くとは限らないものです。年齢が進むに従って、病気のリスクは上がっていきますので、大病を患ってしまい繰上返済用に貯蓄していたお金に手を付けざるを得ないことだってあります。予定通りに行かなかった場合の対応方法については、ちょうどこの前に公開したこちらの記事が参考になると思います。

50代で幾らの家が買えるか?

当初の予定が定年までの完済だからと言って、それに固執して何が何でも完済しようとするのはむしろ危険です。

定年後には両親の介護費用が必要になる人が多いですし、民間の老人ホームに入るのにも最初にまとまった現金を保証金として納める必要があります。今後支給される年金が減ることが分かっている状況では、支払う利息の節約よりもまとまった貯蓄を残しておくことの方がより重要なのです。

損をしても持続可能性を優先すべき局面もある

ちょっとした問題を出しますね。電卓なしで答えを出すことが出来ます。

銀行から100万円(年利12%)の借金をしています。ある日銀行から「金利が高くて大変でしょう。今後、毎月の支払いを1万円にして差し上げます。」という申し出がありました。あなたはこれを受けますか?

⇒答え
場合による。

100万円の年利12%ということは年間12万円、月に1万円の利息です。毎月の支払いは確かに楽になりますが、いつまでたっても元本は減りません。ですから、これを受けるということは、永遠に利息を払い続けることを意味します。

『だったら、損でしょ。こんな申し出を受けるなんてあり得ない。』

これが常識的な答えです。

しかし、今回の借金は住宅ローンです。約定の返済が月に払える金額を超えてしまうと、支払は滞り、返済できないと判断されて、家を取り上げられてしまいます。

そして、その後は利息の代わりに家賃をずっと払い続けることになります。最初に見た表をもう一度見てください。

《持ち家と賃貸の負担の配分の違い》

  持ち家 賃貸
現役時代の負担
(現金とローンの完済)

(毎月の家賃)
老後の負担
(住居費不要)

(住居費必要)

損得にとらわれすぎると、失敗のリスクをかえって高めてしまっていることが分かりますよね。

単純な損得勘定ならば、『申し出を受けず完済する』が正解になるのですが、それはあまりに危ないです。年金で返済を継続できるのなら、無理せず『申し出を受けて利息を払い続ける』を選ぶべきなのです。

  • 申し出を受けない=損得勘定を優先する判断
  • 申し出を受ける=持続可能性を優先する判断

ということです。

まとめ~持続可能性を高めるための損得勘定であるということ

住宅ローンの返済計画を考えるにあたって、損得勘定で判断することを否定しているのではありません。支払いが少ない事によって貯蓄を増やし、老後の資金をより多く貯める事が出来るからです。

持続可能かどうかという価値判断が主であり、その可能性を高めるために損得勘定するんですよね。真剣に家の購入を考えたことのある人なら、頷けると思います。

しかし、この持続可能性というヤツは数値化出来ません。それに対して損得というのは貨幣の単位やパーセンテージで容易に数値化出来るんです。目に見えないもの、数値化できないものは、一段劣ったものと見られがちで、また無視されやすいのです。

本当は、目に見えるものよりも、目に見えないものの方が大事なんです。そして、それは目に見えるもので補完されていく関係にあります。

夫婦間の愛情や親子の絆も同じです。目には見えないですが、これが一番大事です。そして目に見える形で感謝を表し、慈しむことでその存在を実感し、より強いものになっていくんですよね。

文:千日太郎

住宅ローンの選び方【中級編】by 千日太郎
第1回:自分にとっての住宅ローンとは何か?をあなたは知らない
第2回:変動金利とは何か?をあなたは知らない
第3回:固定金利とは何か?をあなたは知らない
第4回:「当初固定金利」とは何か?をあなたは知らない
第5回(前編):固定金利と変動金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない
第5回(後編):一定期間固定金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない

【千日太郎シリーズ】
・ボーナス払い ダメ、絶対 by 千日太郎
・今の低金利時代に定期預金なんて勿体ない?ならば住宅ローンを繰上返済しよう by 千日太郎

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千日太郎(ブロガー)
関西地方在住のブロガー。昭和47年生まれの男性という以外は、詳細を明らかにしていない。自身もリーマンショックの年の2008年に新築マンションを購入し、住宅ローンを借りている。
インターネット上には家の購入や住宅ローンを選ぶときに役立つまともなサイトが少なすぎるという思いから「千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える」及び「千日の住宅ローン無料相談ドットコム」を運営しており、一般の人からの住宅ローンや不動産購入についての相談に無料で答え、個人を特定できない形でその質問と回答を公開している。

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賃貸マンションで家賃を払っているけど、そろそろマイホームを買った方がいいのかな?
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