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マンションの築年数が40年近い。建て替え?どうする?費用負担は?

2017/07/05

マンション建て替え

築年数が経過した分譲マンションが増えています。国土交通省の調査によると、2016年末、全国で築40年超のマンションは約63万戸です。これが2026年末には約172万7,000戸、2036年末には333万6,000戸に達するという予測があります。
建て替えにしろ、修繕にしろ、時間をかけて話し合い、着地点を見つけていくことになるでしょう。

過去にマンションが建て替えられたのは実績は約250件のみ

一方、建て替え実績は、2016年4月1日時点で実施準備中のものを含めて、全国で252件に過ぎません。区分所有法では、建て替えについて、総会で区分所有者の5分の4の賛成が必要と定めていますが、ここに至るまではそう簡単ではありません。

建て替えか修繕か

建て替えの検討開始時期に目安があるわけではありません。ただ、国土交通省が作成している建て替えや修繕に関する以下のマニュアルが参考になります。
マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル

ここでは、老朽度を判定する基準や費用対効果に基づき、建て替えか修繕かを判断するための考え方や進め方などがまとめられています。

ここで、修繕を選択するなら、「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」が参考になります。
改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル

建て替えでは「マンション建て替えに向けた合意形成に関するマニュアル」があります。
マンション建て替えに向けた合意形成に関するマニュアル

費用負担が最大のネック

建て替え決議で最も大変なのは、そこに至るまでの合意形成です。5分の4の賛成を得るまでには非常に時間がかかります。合意が簡単ではない理由の一つには、その費用負担もあるでしょう。

費用負担ゼロでマンションを建て替える方法

過去の建て替え事例の大部分は、事業協力者(不動産会社など)と組んで、余っている容積率を利用し、従前より戸数の多いマンションを建てて、増えた住戸を売却して、事業資金を生み出す手法でした。

建て替え後のマンションで、新たに分譲される住戸数が多く、一戸あたりの販売価格が高ければ、区分所有者の費用負担はゼロになります。しかし、それは容積率に余裕があり、ほぼ完売できると想定されるものに限ります。容積率に余裕があっても、郊外のマンションでは、「建て替えたマンションを全戸販売できるめどが立たない」などの理由で、事業協力者が現れず、建て替えの検討そのものが進まない例もあります。

新たな住戸の売却だけでは、全体の事業費を賄えない可能性もあります。過去には、以前と同じ専有面積の住戸を取得するために数百万円~数千万円以上の自己負担(持ち出し)が必要となったこともありました。費用負担ができない人は、持ち分を売却して別の場所に住み替えることになってしまいます。建て替えたマンションに戻った所有者は、2割程度だった、という例もあります。

加えて、建て替えに積極的にならないのは、「住環境を変えたくない」という理由を挙げる人もいます。高年齢化が進み、何度も引っ越しすることへの負担感もあります。

実際、建て替えを実現した管理組合のなかには、検討から10年以上かかった例も少なくありません。検討をしたものの、修繕し続けていくことを選んだ管理組合もあります。

少しずつ法制度も整備されてきている

このような状況下、少しずつ建て替えに関する法律が整備されています。

マンションの建て替えには、3つのパターンがあります。
(1)建て替え決議を行わず、全員合意により個別に等価交換
(2)区分所有者の5分の4以上で決議し、反対者に対し区分所有権の売り渡し請求をして賛成者のみで等価交換
(3)区分所有者の5分の4以上で決議し、「マンション建替え円滑化法」により建て替え組合法人を設立して区分所有者の土地と建物の権利を消滅させずに権利変換

これまでの建て替えでは、大部分が(2)と(3)で実施されてきました。

等価交換とは

(1)と(2)の等価交換とは、まず、区分所有者が自分の土地と建物の持ち分を、事業協力者である不動産会社に売却。マンション完成後、その費用で同価値の土地と建物の持ち分を買い戻す方法です。

マンション建替え円滑化法とは

(3)の「マンション建替え円滑化法」とは、2002年に制定された法律です。正式名称を「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」といい、建て替え決議後の手順を円滑に進めるための様々な手続きや方法を定めたものです。建物を壊しても、区分所有権や敷地利用権は消滅しません。新しいマンションに権利変換できるので、建て替えがスムーズに進みます。
 
円滑化法は、2014年に改正されました。耐震性不足の認定を受けたマンションでは、区分所有者の5分の4以上の賛成で敷地売却ができるようになったり、周辺環境に配慮した建て替えを行う場合、容積率の緩和が受けられたりするようになりました。容積率の緩和を受けるには、要件に合致する必要があり、すべてのマンションが対象になるわけではありません。それでも、これまでより話し合いが進みやすくなる可能性はあります。

建て替えの相談がしたい

建て替えや敷地売却についての相談体制も構築されています。公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」では、相談を受けています。

日頃から管理組合で話し合いを

マンションの築年数が経ってくると、建て替えか修繕し続けるかの検討は、避けては通れない問題になってきます。どのような結論にしろ、管理組合活動を通して、住民同士のコミュニケーションをを取っておくことが基本になるでしょう。そして、区分所有者それぞれが、普段から今後の自分の住宅のあり方、住まい方についても真剣に考えておく必要があるのではないでしょうか。

文:高田 七穂(不動産・住生活ライター)

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