すみかる住生活版

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日本の石(国石)をご存知ですか? 〜海岸でヒスイ探しのススメ〜

波打ち際

糸魚川市の海岸(撮影:なつのはな)

2016年9月、日本の石(国石)が選定されたのをご存知でしょうか。

国産の美しい石であること、日本人の生活に長く関わってきたものであること、今も国内で産出されることなどを条件に、日本鉱物科学会によって選ばれました。

水晶やメノウなど5つの候補の中から、みごと日本の石に選ばれたのは「ヒスイ」でした。なんとも言えない半透明の緑色がかった白っぽい石を、ご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。
日本の石ヒスイと、ヒスイの代表的な産地である新潟県糸魚川市についてまとめました。

参考:一般社団法人 日本鉱物科学会

ヒスイの産地、糸魚川ってどんな街?

新潟県の糸魚川(いといがわ)市は、ヒスイの代表的な産地です。
その歴史は古く、縄文時代にヒスイの加工や玉作りが行われたとされています。

『古事記』には、ヒスイを求める大国主命(おおくにぬしのみこと)が、はるばる出雲の国からやってきて、奴奈川の郷(現在の糸魚川市)を治めていた奴奈川姫(ぬなかわひめ)にプロポーズするという物語がつづられています。

また、日本列島誕生の際にできたフォッサマグナ(大地の溝)の西の縁「糸魚川静岡構造線」の通る街としても知られ、2009年には日本で初めて「世界ジオパーク」に認定されました。
2015年に金沢まで開通した北陸新幹線を使えば、東京からおよそ2時間で糸魚川駅まで行くことができます。

長野県と富山県の県境付近には山岳地帯が広がり、登山や高山植物の観察ができる一方、透明度抜群の日本海では釣りやシュノーケルも楽しめ、新鮮な海の幸をお腹いっぱいいただくこともできるうえに、温泉も充実しています。
山や海で遊び疲れた体を休める温泉も充実しているとは、さすがジオパークというだけのことはありますね。
なかなか魅力的な街だと思いませんか?

参考:世界ジオパークのまち 糸魚川市

海岸で、日本の石「ヒスイ」を探そう!

山に海に温泉まで、好みに応じた楽しみ方ができる彩り豊かな糸魚川ですが、最も注目すべきは「ヒスイ探しのできる海岸」でしょう。

縄文時代から珍重され、国を象徴する石に選ばれるほどの宝石が、海水浴場としても人気の海岸で、誰でも拾えるというのです。なかなか貴重な体験ですよね。これはもう、家族揃って、お友達を誘って、大切な休日を使って糸魚川の海岸へ行くしかありません!

ヒスイ探しのできる海岸は、どこにあるのでしょう。

糸魚川ICから車で8分、新幹線の糸魚川駅から徒歩20分程で行ける糸魚川海岸は、ヒスイ海岸とも呼ばれていて、ヒスイハンターがこぞって押し寄せるスポットです。
糸魚川海岸以外にも、実際にヒスイが見つかっているスポットが多くありますので、現地の観光ガイドなどで聞いてみるといいかもしれません。

なぜ、ヒスイが拾えるのでしょう。

糸魚川の山あいには、国の天然記念物にも指定されている「小滝川ヒスイ峡」や「青海川ヒスイ峡」があります。
日本で初めてヒスイが発見された場所でもあり、現在も巨大なヒスイの原石を、目の前で見ることができる場所です。(このエリアでの岩石や植物の採取は禁止されています)

これらのヒスイ峡から、長い年月をかけて川を下り、一度は日本海へ流れ出たヒスイの原石が、波に乗って再び海岸に打ち上げられる。これが、海岸で、誰にでも拾えるヒスイの正体のようです。

ヒスイって、どんな石?

さて、ヒスイ海岸でヒスイを探しましょう。海岸で見つかるヒスイは、当然ですが原石です。
磨けば光る原石も、原石の状態のまま素人が見分けるのは至難のワザ。まずは、ヒスイの特徴を、きちんと押さえなければいけません。

大きな特徴が4つあります。
・白っぽい(緑色や紫色のヒスイは貴重。そのほとんどは白い)
・見た目よりも、重い(同じくらいの大きさの石と比べると、ヒスイの方が重い)
・表面がなめらかで、角ばっている(とても硬く割れにくいので、丸くなりにくい)
・光をあてるとキラキラと輝く(半透明のものもある)

糸魚川の海岸には、日本一とも言えるほど様々な種類の石が転がっています。その幾千もの石の中で、4つの条件をすべて満たす石、それがヒスイです。
似たような石で、キツネ石と呼ばれるほど紛らわしい石もありますが、5億年もの大昔、大地の奥深くで生まれたヒスイを、自分の手で探し出すという貴重な時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

もしヒスイが見つからなかったとしても、長い年月をかけて角が取れ、大自然の力で磨かれた美しい石がたくさんあります。自分だけのお気に入りを見つけることもできるでしょう。

フォッサマグナミュージアムへ行ってみよう

ヒスイ常設展

ヒスイの原石(フォッサマグナミュージアム常設展 撮影:なつのはな)

ヒスイ探しを楽しんだ後は、フォッサマグナミュージアム(石の博物館)がオススメです。
糸魚川を代表する鉱物であるヒスイはもちろんのこと、世界中から集められた貴重な鉱物や岩石、宝石の原石がたくさん展示されています。
また、フォッサマグナ(大地の裂け目)をポイントに日本列島誕生の様子を大きなスクリーンで見られるほか、化石の展示室などもあって、見ごたえたっぷりの博物館です。

なぜ、ヒスイ探しの後にオススメかというと、この博物館では、海岸で拾った石の鑑定をしてくれるのです。
それも無料でです。なんとも嬉しいサービスではありませんか。

ヒスイ以外の石も、石の名前や特徴を丁寧に教えてくれます。(石の鑑定はひとり10個まで。学芸員が不在の場合もあるので、要事前確認)

海岸で色々な種類の石を集めて鑑定してもらい、夏休みの自由研究にする小学生も多いそうです。「これは恐竜の時代にできた石だよ」なんて言われたら、ヒスイでなくても宝物になりますね。ミュージアムを一周して外へ出ると、また海岸へ石を探しに行きたくなること請け合いです。

ヒスイは、古来より魔除け・厄除けになると共に、幸運を招く石として珍重されてきました。磨かれて店頭に並んだヒスイは、美しく素晴らしいものですが、海岸で、自分で見つけ出したヒスイの原石をお守りにできたら、とても素敵ですね。

雪解けの春や、たくさん雨が降って川や海が荒れた後に行くのが、ヒスイを見つけるコツだそうです。次の旅行先の候補に、いかがでしょうか。

国の石に選定されたことで、盗掘などの悲しい被害も発生していると聞きます。ヒスイ探しにお出かけの際は、マナーを守って楽しんでいただければと思います。

文:なつのはな

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