すみかる住生活版

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パパから見た産後クライシスの乗り切り方〜パパとママが子育てチームを結成したら〜

すれ違う夫婦
ここは首都圏にあるマンションや不動産を扱うデベロッパー会社の休憩室です。
「結婚して2人でいるときは仲が良かったのに……」
「ここのところずっと、奥さんが訳もわからず機嫌が悪くて……」
と落ち込んでいる声とため息が聞こえてきました。

ため息をついているこの男性は、数ヶ月前に一児のパパになったばかりの直也。30代で、家族が増えた分、毎日遅くまで仕事をしているようです。でも家庭での夫婦関係がうまくいっていないのが悩みの種です。

そこに同僚の涼太がやってきました。直也とは学生の頃からの友人で、涼太も3歳と1歳の二児のパパです。愛妻家として社内でも知られています。

子育ての話になるとどうしても、女性目線中心になってしまいがちですが、パパたちだって考えたり、工夫したりしていることもきっとあるはず。そんな子育て中のパパたちの話をちょっと聞いてみることにしましょう。

パパとママは同じ地球に暮らす異星人

「今朝も奥さんが訳もわからず機嫌が悪くて、家に帰るのが嫌になってしまうよ……」 とため息混じりで直也は涼太に話し始めました。

「子どもができたら、何かとお金がかかると思って、毎日遅くまで仕事を頑張っている。遅くに帰宅するから起こさないように気遣って、小さな音でテレビを見ているのに、うるさいと言われるし。おまけに普段遅くまで仕事している分、休みの日ぐらいはゆっくり寝ていると、”ここに住んでいるのは私だけじゃないでしょ!” って言われてしまう」

ため息をついて、直也は続けます。
「だから僕は何か手伝おうかというと、もういいとなぜか怒られるし、最近妻のことがよくわからないよ。でも僕だって、妻と子どもが家にいない間に掃除機をかけるぐらいはしているし、休みの日に子どもと遊んだりしたい。でも、何か気に入らないみたいで不機嫌になる。どうしてと聞いても答えてくれないし……」

「まあまあ、落ち着けって」 そう言って、涼太は自販機から缶コーヒーを買って直也に渡しました。
直也はコーヒーをゴクリと飲み、また大きくため息をつきました。

「今の君たち夫婦は典型的な産後クライシスっていう状況だね」

「産後クライシス?」

「そう、産後クライシス。奥さんが出産してから数年ぐらいまでの間に、夫婦仲が悪くなってしまう現象のことだよ。原因は色々とあるらしけどね」

地球に暮らす異星人とは?

涼太は、お弁当箱を片付けながら、話を続けます。
「君が頑張っているのは、とてもよくわかるよ。きっと手伝いもしている。でも、今の君の話だと ”育児や家事をする=ママ” というように聞こえてしまう。」

直也はすかさず、言いました。
「でも実際に妻は家にいるし、子どももやっぱりママでないと、ということが多いし、実際に妻がやったほうがスムーズだし。僕が手伝うといっても何をしたらいいか教えてくれないし」

涼太は水筒からお茶を入れて、ひと口飲みました。
「そこなんだよ。女性は言葉に出さなくても察してとか、空気読んでといった暗黙の了解的なことが結構多いらしいんだよね。ところが僕ら男性は、言葉に出されていることや物理的なことから判断する傾向らしい。ここだけみても、男女はお互いから見れば、同じ地球で暮らす、同じ言語を話す異星人だと思っておいて、ちょうどいいと思うよ」

異星人の対処方法

「異星人?」

「そう、異星人。だからお互いに判断基準や捉え方が違うから通じないんだ」
涼太は笑って答えました。

「お互いが異星人なんだって思ったら、相手に対して言い方を変えてみるだろう? 例えば、相手の思っていることが知りたかったら、僕は気持ちを察することに疎いから、なるべく君の思っていることを声に出して教えてくれないかとお願いしてみてはどうだろうか?」

「なるほど、異星人だと思えば、確かに言い方を変えるかもしれないね。うまく伝わらなくても、異星人だったらそう考えるのかとか、自分の常識では通じないんだと思って、次は別の言い方を考えようと思えるわけか」
直也の表情に少し笑みが浮かびました。

「だからと言って、伝わらないままにしてはもっと怒らせるから、その辺りは気を付けないとね」

「そういうものなのです」の心構えでお互いのストレス軽減

疲れ切った妻
「直也は休みの日とか、子どもと2人だけで過ごすことはあるのかい? もし無いなら早めに、しかも少し長い時間を経験してみるといいよ」

「1日中子どもとだけか。それはまだ僕には無理だなぁ」と直也は残りのコーヒを飲み干しました。

「でもね、僕自身が本当にパパにならないとと思ったきっかけは、1人めの子どもと1日を2人きりで過ごした後からなんだよ」と涼太は水筒からお茶を注ぎます。

「いや、子育ては大変だよと言葉で軽く言うけど、いざ自分だけでとなると、実際には不慣れなうえに、やることがたくさんあって時間があっという間に過ぎてしまったよ。今まで夫婦の子育て教室などにも参加していたから、ある程度はこなせるものと思っていたけど、甘かったねぇ」

直也は意外な顔をして、涼太を見ています。
「子どもって大人の想像を超えることだらけで、こちらのペースを崩されるからきちんとこなせることが少ない。逆に子どもが寝ていると、掃除機かけて起こしてしまったらまた……って恐怖で、家の中を片付けたくても、片付けられなかった。妻が帰宅したときには、何だかね、ホッとしたよ」

子育てタスクの多さを実感すること=パパとしての芽生え

涼太はひと口、お茶を飲んで話を続けました。
「でも大きな収穫もあった。産後の女性はどうしてもホルモンバランスとかが崩れてしまうらしいんだよ。そこに、なれない子育てが押し寄せてくるのだから、不安や上手くいかないイライラで不安定になるものなんだって。

そんな状態なのに、これだけのことを毎日、妻1人に任せていたら、妻が壊れてしまうかもしれない。それから何らかの事故が起きるかもしれないという危険性に気が付けたよ。そこからは妻の体調や様子を気にかけるようになったし、自分もちゃんと体調を管理して負担をかけないようにしようと思うようになったよ」

「確かに! 今、妻が倒れたら、僕はお手挙げ状態だな」と直也は肩をすぼめました。
涼太も笑いながら相槌を打ち、また話を続けました。

ありがとうの笑顔をください

「今はもう、家に帰って夕飯がスーパーのおかずでも、今日はそれくらい大変だったんだと思う。だから、せめて食べた後の片付けは僕に任せて、君は休んでほしいと自然に言葉が出てくるようになった。単純だけど、妻がありがとうと笑ってくれるのはやっぱり嬉しいし、頼りないかもしれないけれど、任せて休んでほしいと思う。

何か気に入らなかったり、うまくいかなかったりしてイライラしているなら、今日はそういうことがあった日なんだろうとか、産後の妻は不安定になることがあるものなんだと思うようになったよ。

そうするとね、子どもが生まれてからは確かにスキンシップは減ってしまったかもしれないけど、妻からも僕の体を気にかけてくれるようになって、ある種、子育てチームが結成されたって感じがしているよ。おっといけない、そろそろ時間だ」

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