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千日太郎

2017/06/19

「当初固定金利」とは何か?をあなたは知らないby 千日太郎|住宅ローンの選び方vol.4

千日太郎

住宅ローンに関するブロガーとして著名な千日太郎さん。過去にお話しいただいた「ボーナス払い ダメ、絶対」「今の低金利時代に定期預金なんて勿体ない?ならば住宅ローンを繰上げ返済しよう」が大変好評だったため、今回はシリーズで住宅ローンの選び方について語っていただきます。自身がマイホームを購入した経験と、ブログで受け付ける住宅ローン相談に答えることによって蓄積される知識を元に編み出された「千日メソッド」を大公開。(いえーる すみかる編集部)

千日の住宅ローンの選び方シリーズ、今回は全5回シリーズの4回目です。
住宅ローンの当初固定金利についてお話しようと思います。

第1回:自分にとっての住宅ローンとは何か?をあなたは知らない
第2回:変動金利とは何か?をあなたは知らない
第3回:固定金利とは何か?をあなたは知らない
第4回:「当初固定金利」とは何か?をあなたは知らない
第5回:ミックスローンとは何か?をあなたは知らない

銀行の融資担当者にどんな商品ですか?と聞いたら『当初の固定期間は金利が固定されていますが、その期間が終了すると改めて金利を選び直すタイプの住宅ローンの商品です』という回答が返ってくるでしょう。その通りです。

銀行の担当者がもう少し親身になってくれる人であれば『当初の固定期間が終わると店頭表示金利からの引下幅が減ってしまいます』ということも教えてくれます。例えば三井住友信託銀行の3年固定と変動金利を比較してみましょう。

期間 3年固定 変動金利
当初の3年 店頭表示金利2.850%
引下幅△2.450
適用金利0.350%
店頭表示金利2.475%
引下幅  △1.875%
適用金利  0.600%
その後変動金利を選んだら 店頭表示金利2.475%
引下幅△1.700%
適用金利  0.775%

ですから、35年間の借入期間であれば、金利が安いのは当初の3年だけで、残りの32年は変動金利よりも高い金利が適用されることになります。
また、金利が固定されて安心なのは当初の3年だけで、残りの32年は金利の上昇リスクを負担することになります。
当初固定金利、という表現が誤解を生むんでしょうね。千日流に表現するなら「当初固定期間後ちょっと高めの変動金利」です。つまりこれは変動金利の一種です。

『だから当初固定金利を選んではいけない』

もしこのように思っているのだとしたら、私の話を聞く価値があると思います。そんな単純なものではありません。もっと奥が深いのですよ。

1.当初固定金利タイプの本質と心構え

まず、銀行の担当者が説明する『当初の固定期間は金利が固定されていますが、期間が終了すると改めて金利を選び直すタイプの住宅ローンの商品です』という説明には銀行側のバイアスが既にかかっているんですよ。
 
✔そのまま、当行で借り続けてほしい。
✔その場合、惰性で高めの金利に移行してほしい。

住宅ローンを借りるときって、人生最大の契約ですからみんなすごく考えるんですよね。このエントリーを読んでいるのがその証拠です。でも、住宅ローンは一度借りて返済が始まり、ちょっと時間が経過するとじきに慣れてくるんですよ。日々の生活や仕事ではいろんな問題が起こりますから、今ほど金利のことを考えなくなるものです。

当初の固定期間が終わって、月に数千円の支払いが増えたとしても『まあ、払えない金額じゃないし』と惰性でそのまま続けてしまう人の割合が一定数います。銀行の狙いはそこにあるんですよ。一人ひとりの利用者にとって月に数千円ですから負担感はあまりないですが、それが何十年も安定して続くというのが銀行の収益になるわけです。

なので、銀行のバイアスがかかった見方で当初固定金利を捉えてはいけません。利用者の目線から、当初固定金利をどう捉えるか?という話をしましょう。

(1)銀行との間では何も決まっていないけど、自分の中では決まっている

当初固定金利とは、当初の固定期間の条件は決まっているが、期間終了後のことは何も決めない(白紙)の金利タイプです。
 
✔そのまま、この銀行で借り続けるとは限らない。
✔ましてや、惰性で高めの金利なんて払わない。

『何も決めない』のは銀行に対しての話です。これ大事なポイントです。

自分の中ではきっちり決めているんですよ。後に述べる二つの方針に基づき、選択肢のどれかを必ず行います。これ、銀行の人が見たらあんまり良い気のしないものだと思います。なぜなら、銀行は我々にこれをしてほしくないから、バイアスをかけた説明をしているからです。

(2)今決められないことは、当初固定期間が終わっても決められない

方針 選択肢
借り続けない 他行への借り換え
多額の繰り上げ返済
家の買い替え
高い金利に甘んじない 他行への借り換えをちらつかせての金利交渉

『今後どうするか分からないから、とりあえず』当初固定金利にする人が、銀行にとって最高のお客さんなんですよね。『とりあえずビール』はアリですけど、『とりあえず当初固定金利』はナシですよ。今のこの最初が大事です。住宅ローンの問題意識もプレッシャーも時を追うごとに薄まっていきます。

今決められないことが、3年後、5年後、10年後に決められるわけがない。そうは思いませんか?

2.10年固定金利と住宅ローン控除の相性はバツグンです

当初固定金利タイプにはいろいろな固定期間の商品が用意されています。3年、5年、10年、15年、20年、25年、30年などが主な設定期間です。中でも千日がおすすめするのは10年固定金利です。

(1)10年間の『利回り』が確定した投資のような効果

10年固定金利は当初10年間の金利が固定されている金利タイプです。
そして、住宅ローン控除は当初10年間にわたり、12月31日時点の住宅ローン残高の1%を納めた税金からマイナスする減税措置です。
例として3千万円を10年固定金利0.65%で35年元利均等返済で借りる場合にどんな感じになるかお見せしましょう。

借入3,000万円 説明 返済金額
10年固定金利0.65% 毎月0.65%の利息を払う。 958
住宅ローン控除1% 12月31日のローン残高の1%が返金される。 △257
10年後残高 全額繰り上げ返済する。 2,211
返済合計(単位:万円) 約0.35%儲かる 2,912

極端な例ですが、3,000万円借りたのに返済するのは2,912万円になり、88万円の利益が出る訳です。払う利息よりも還付される(返金される)税金の方が大きくなるからこういうことになるのです。10年固定金利ならば、文字通り10年間は金利が固定されていますから、住宅ローンを完済しさえすればこの『利益』は確定的なものになるんですね。

借金なのに、投資のように利益が出る。それもほぼ確定した利回り。こんな嘘のような本当の話が、今の住宅ローンの『常識』なのです。

(2)10年固定は銀行間の競争が激化している金利タイプ

 
このように、10年固定金利は住宅ローンとの相性が抜群に良いので、人気の金利タイプなのです。ですから、銀行間も競って金利を下げて利用者の獲得に乗り出しています。10年固定は銀行が売りたい金利タイプであり、他の期間よりも割安な金利設定になっていることが多いということですね。

3.計画的な繰上げ返済、定年までの期間でロスの無い固定期間を選ぶ

繰上げ返済と固定期間の選び方についてお話します。例として10年固定に力を入れている三井住友信託銀行で見てみましょう。長期間金利を固定する商品ほど金利が高くなります。この表を見たら、2年固定を選ぶ人はいないでしょうね。

固定する期間 金利(2017年6月)
変動金利(半年) 0.6%
2年固定 0.35%
3年固定 0.35%
5年固定 0.45%
10年固定 0.65%
15年固定 0.9%
20年固定 1.00%
30年固定 1.05%

中心に考えるのは10年固定です。前述したように、住宅ローン控除の恩恵をフルに受けてからその時のローン残高の大部分、ないし全額を繰上げ返済しようと考えているなら、10年固定です。
 そしてもう一つ、定年までの年数です。毎月の返済額のハードルを下げるために最長の35年で住宅ローンを組むのですが、固定期間は定年までで必要にして十分です。上記の表で見ると30年固定がオトクに見えますよね?プラス10年固定するのに0.05%のアップで済むのですから。

しかし、定年退職までの期間が20年前後である場合は固定期間を30年にする必要はありません。千日メソッドでは定年時の完済を目標にします。つまり、定年以降の固定期間はいくらオトクであっても、オーバースペックなんです。

4.将来の金利動向ではなく残高に集中する

『もし、固定期間が終わったその時に金利が上がってたら怖い…』

こんな風に不安に思われるかもしれませんが、固定期間が終わった時には借入残高を安全圏まで減らせるようにしておけば良いのです。何年も先の金利動向を読もうとしてはいけません、そんなの誰にも分かりません。
金利動向ではなく、その時に自分がローン残高を幾らまで減らすことが出来るか?を考えるのです。

 利息=ローン残高×金利

こんな計算ですよね。金利は予測できませんし、まして自分でコントロールすることもできません。しかし、ローン残高は貯蓄の計画を立てて予測することが出来ますし、自分でコントロールできる要素なんです。

当初固定金利を選ぶ時に軸になるのは『金利ではなく残高』です。その固定期間が終わった時に安全圏まで元本を減らせるか?これが当初固定金利タイプを選ぶ人が返済計画を立てる軸なんですよ。

5.当初固定金利はどんな人に向いているか?

住宅ローンの金利タイプについて、正しい認識を持つことが最も失敗の無い選択につながると思っています。

今後金利動向はどうなるんだろう?とりあえず当初固定金利にしておけばそれまでは安心か…

もしも、こういう認識であったのなら、ひとつレベルアップできたのではないかと思います。金利タイプというのは銀行が売り出す住宅ローンという『商品の種類』です。銀行の説明を鵜呑みにすることなく、自分に合った商品なのか?という判断をする必要があります。

当初固定金利タイプが合っているのはどんな人か?どんな人に当初固定金利がお勧めかを最後にお話ししておきましょう。

(1)10年固定のリスクをメリットに出来る人

✓経済の動向や住宅ローンの金利情報を抜け目なく収集する情報にマメなタイプ。
✓今後の仕事でのキャリアアップ、収入アップに強いモチベーションがあるタイプ。

どちらかに当てはまるなら、10年固定のリスクをメリットに出来る人です。10年経過後には金利の引き下げ幅が1%前後減ってしまいます。ですから借り換えたり、金利の交渉をしたりするんですが、そういう時に自分の利益を最大化出来るような情報収集と交渉力が鍵になるんですね。

今、銀行と交渉するのに気おくれしてしまうという人でも10年といえば10歳の少年が成人する期間です。今よりも銀行に対する信用力は上がっていて、電器屋さんで家電を値切るような感覚で銀行と交渉出来るようになっているかも知れません。

『値下げしないんだったら他行を利用するからイイよ。』

実際、金利の交渉はこんなノリなんですよ。

(2)10年固定のリスクにデメリットが無い人

✓お金持ちです。

例えば1億円の現金を持っている人が3千万円の住宅ローンを10年固定で組んだら、いつでもローン残高をゼロに出来るんですから、リスクは低いです。

それだけ現金があるなら、借りなくてイイじゃん。と思うかも知れませんが、住宅ローン控除があるので住宅ローンを借りた方がお金が儲かるという理由でそうしているお金持ちも多いのです。親から多額の贈与が見込めるような人も同じです。

(3)自己資金ゼロで家を購入する若い人

お金持ちに向いていると言った後ですし、基本的に十分な自己資金無く家を購入することはお勧めしません。しかし、自己資金ゼロのフルローンで家を購入する若い世代には、10年固定が一つの活路になることは確かです。

✓それまで、計画的に貯蓄をしてこなかったことを反省している。
✓しかしこの家を購入したい。これから計画的に貯蓄していきたい。

当初の10年間は金利が固定されていて、住宅ローン控除があります。その安全な10年の間に後から頭金プラスαの自己資金を貯めて、10年後にそれを繰上げ返済するのです。その時に上がっている信用力をもって金利の安い他行に乗り換える、ないしは、銀行に対して金利交渉して金利を引き下げるようにするんですよ。

努力によって『(1)10年固定のリスクをメリットに出来る人』のタイプに自分を高めるということです。

(4)ある程度の自己資金やローン完済済みの家があるシニア層

自己資金の無い若い人の活路になりますが、ある程度の自己資金がある50代からのシニア層にもお勧めです。例えば定年退職までの期間が10年であれば10年固定に住宅ローン控除、全額繰上げ返済のコンボで、確実に最小の支払いで家を手に入れることが出来ます。

子どもたちはみんな独立して広い家は必要なくなり、今では物置のスペースが多くを占めている。

ならば、今の家は売却し、終の棲家として夫婦にジャストサイズの家を購入するには、10年固定を中心とした当初固定金利タイプがベストな選択となるでしょう。『(2)10年後のリスクにデメリットが無い人』のケースに似たパターンということです。

5.まとめ~住宅ローンの選択に『先送り』は禁物

『変動金利は安いけど金利変動が怖い、固定金利は高い、どっちか決められない…』

そして決断を先送りして当初固定金利を選ぶ人が一定数います。そして銀行の方も『〇年後に改めて決断タイプ』というように先送りすることを勧めるような説明を行います。先送りしてくれた方が銀行の利益になるからですね。

むしろ当初固定金利の本当の姿は今後の計画をドラスティックに決める人や、決めざるを得ない人にこそ向いている金利タイプなのですよね。住宅ローンの金利タイプをちゃんと把握し、自分のライフプランに合った商品を選ぶようにしましょう。そして、どの金利タイプを選ぶにしても決断の先送りは禁物なのですよ。

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