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【マンガ】妊婦受け入れ拒否について想ふ。見出すべき「解」とはいったい何?【松本えつをの子育てあるある vol.1】

この連載は、かつて、クリエイターならではの切なさや怒りの感情をマンガで表現し、多くのクリエイターたちの共感を呼んだ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” のスピンオフ企画。日影工房の主要メンバーであり、「妊娠・出産・子育ての中で、仕事をする機会を奪われがちな女性の “ 働く ” をサポートしたい!」という想いから生まれたウーマンクリエイターズカレッジの創設者でもある松本えつを(役名:きのこ)さんが自身の出産体験を元に、ニッポン人女性の視点から妊娠・出産・育児にまつわる「あるある」をお届けします。(いえーる すみかる編集部)
 
> 松本えつをの子育てあるある 他の記事はこちら

こんにちは。 “ クリエイターあるある in 日影工房 ” から飛び出てきた「きのこ」こと、松本えつをです。

今回は、いきなりちょっと……いやだいぶ、まじめに重いテーマに触れていこうと思う。

ズバリ、

 どうしてもモヤモヤする「誰が妊婦を殺したか」論

について。

2015年にドラマ化されて話題となった「コウノドリ」(鈴ノ木ユウ 原作・綾野剛 主演・TBS)。ドラマ第1回の冒頭には、未受診の妊婦が倒れて救急車に運ばれるシーンがある。

未受診ゆえにハイリスク。搬送されるものの受け入れられる病院がなかなか見つからず、主人公サクラがいる病院に連絡があった際、サクラが即答で受け入れを決断する……

そこからまさに極限までハラハラドキドキさせられるストーリーが展開していくのだけれども。過去に出産で死にそうな経験をしたわたしは、そりゃもう釘付けに!

「文字通り、ドラマだから、そりゃドラマティックに仕上がっているんだよね?」、「ほら、リアルな出来事にさまざまな脚色をして、ジェットコースターみたいに高低差を演出して視聴率アップも狙ってさ!」……なんて斜め上からの意見もあるかもしれない(ないかもしれない)。

でもね、あのドラマは特に、決して事実無根のストーリーを構成したり、大げさな脚色を加えたりはしていないと思うのよ。だって、実際にあったもの、この国で、そういうことが。しかも1度や2度じゃなく、何度もだよ!

そして、今思うと、その出来事が自分自身の生き方を変えるきっかけにもなったんだよな……と。

ということで、およそ10年前にさかのぼって、当時の出来事をマンガにすることにした。タイトルが少し残酷だけれども許してほしい。






(タラタラと汗を流しているのは、まさに妊娠真っ最中だった、きのこデス)

ニュースを取り上げた番組では、その後、スタジオのコメンテーターにコメントを求めるのだが、そのコメントが、たとえばこんな……





……いやはや、なんというモヤモヤ感。人の命がひとつ失われている状況下で、まっさきに「誰のせい」論。

たしかに、何か問題が起きたときに、その原因を追及することは大事だけれども、これはアレです。責任の所在が明確になったら「それで終了、はい解決、次!」ってパターン。

「医者のせいね。マスコミのせいね。妊婦本人のせいね。……ってことで責任取ってね!」というところまで行ったら、あとは他人事ってやつだ。

なんだか、コメンテーターの方に対して言い方が失礼ですみません。だが、実際そう感じたのだから仕方ないよね。(←ぜんぜん謝ってない)

いや、たまたまそのときに出演していたコメンテーターの方々を叩きたいということじゃなく、彼らに代表されるように、我々ニッポン人(あるいは人間全体?)には少なくとも、そういう傾向があると言えるんじゃないか……ということなのだ。

2007年頃にたびたび報道された「妊婦たらい回し」と呼ばれるニュース

2007年頃、日本各地で起きた複数の妊婦受け入れ拒否問題が報道された……が、記憶にあるだろうか? その呼び方にも賛否両論あったりするのだけども、一番わかりやすい俗称はやはり、残念ながら、“妊婦たらい回し” 事案である。

中でも目立ったのは、救急車で運ばれてきたのが「未受診」の妊婦だったということ。結果、救急車を呼んだものの搬送先の病院が見つからず、多いときは10軒以上の病院をたらい回しにされ、妊婦や赤ちゃんに危険が及ぶという社会問題。ひどいときには死産や妊産婦死亡という事態に陥る。

もう10年ほど経過しているので、人々の記憶も薄れているだろうからこそ、今回は、当時、各地で起きた妊婦受け入れ拒否事案と、その後になされた協議の一部を例にあげつつ、本当に必要なこととは何か? について考えるきっかけをつくりたかった。
その後、事態を深刻に捉え、国会でも地方自治体でも医療関係者間でもさまざまな議論や対策がなされて、この10年ほどで妊産婦や赤ちゃんをめぐる環境は改善されてきたと言えるが、まだまだ、まだまだ、まだまだ! 決して十分とは言い難い。

「妊婦たらい回し」はなぜ起きるのか?

すべての物事には原因と結果がある。ゆえに、この件に関してももちろん、原因を探っていかなければならない。でもそれは、「責任の所在を明確にする」という目的を第一に置くものではなくて、「最適な解決方法を導き出す」ためである……と、少なくともきのこは考えるのだ。

マンガにもある通り、こういったことが起きる場合、患者が「受診歴のない妊婦である」というケースが多い。これが、コメンテーターCのセリフにもある、いわゆる「未受診妊婦」。

そもそも未受診妊婦って何? そんなに危険なの?

未受診妊婦とは、文字通り、これまで産婦人科などの医療機関にかかっていない妊婦のこと。現在、日本では、妊婦は妊娠期間中に14回ほどの妊婦健診を受けることとなっていて、母親・胎児ともに健康状態に異常がないかを定期的に調べ、問題があれば早急に手立てを打つものであり、健診に行かなければ異常に気づける確率も大幅にダウンすることがわかっている。

妊娠期に発生するマイナートラブルには、じつにさまざまなものがある。その具体的な内容を知ると、未受診(=かかりつけ医がいない状態)のまま妊娠期を過ごし、いざというときを迎えるということが、どれだけ危険なことなのかがわかるはず!

大阪府では、2009年に、未受診妊婦を「妊婦健診を1回も受けずに分娩または入院に至った」「全妊娠経過を通じての妊婦健診受診回数が3回以下」「最終受診日から3か月以上の受診がない」のいずれかに該当する者と定義(*1)し、調査を行った。

その調査でわかったのは、妊婦健診に行かなかった理由の第1位は「経済的理由」で33%を占め、次に「無知」、つまり、妊娠にさえ気づかなかったり、妊娠したらどうしたらいいかという知識が欠如もしくは不足したりしていたという理由が21%を占めている(*1)ということだった。

(*1)妊娠・出産にまつわるデータ集:第6回 未受診妊婦の割合
http://baby.mikihouse.co.jp/information/post-2156.html

第1位「経済的理由」の背景には何がある?

ひとことで「経済的理由」と言ってしまうと、「医療費も払えないくらい(保険にも加入していないくらい)ジリ貧だったのかよ!」と思う人もいるかもしれないが、何を隠そう(?)、妊婦健診には原則として保険は適用されないのである。だから、病気にかかっても医者に診てもらえないという話とはワケが違うのだ。

さらに、現在では各市町村から補助チケットなるものが発行されるため、妊婦健診の負担は減ってきているが、10年前に至っては、14回中2回分の補助しか受けられなかった(市町村によって異なる)。

このあたりのお話は、次回お伝えしようと思うので、これ以上は割愛するけれども、とにかく、妊娠・出産はお金がかかるうえに、国や地方自治体からの補助は思いのほか薄いと言える。

第2位「無知」のうち、「どうしたらいいかわからない」の背景は?

「無知」にも、純粋に知識が欠如しているケースと、未婚や、パートナーの逃亡(!)や、父親が誰か不明、若年すぎるなどの特殊な状況下に置かれているがために、ひとりでは判断がつかないというケースがあるんじゃないかな、と思う。

そのような特殊な事情の場合は、解決方法も限りなくケースバイケースになるんだろうけど、純粋な知識の欠如であれば、妊娠の可能性がある女性たちの意識の改革と、それをサポートする仕組みをもっと充実させることで、大幅に改善できるはずだ。

たとえば、「妊娠したらどこに行けばいいか」がわからなければ当然、「出産一時金」の存在も知らないだろう。つまり、知識をちゃんと得ていれば、第1位の「経済的理由」による未受診妊婦の数の改善にもつながる可能性があると言えるのではないだろうか。

第1位と第2位の原因を解消できたら未受診妊婦が半減する可能性も

上記の「経済的理由」(33%)と「無知」(21%)を合わせると、54%になる。そのたったふたつの理由で過半数なのだ。それはつまり、仮にふたつの原因を解消できたら未受診妊婦の数が半減する可能性があることを示している。

とはいえ! お金の問題は社会システムに大きくかかわりがあるため、一個人が叫んだところで簡単には改善されないだろうし、無知である状況を防ぐためにも大掛かりな情報網の改革が必要。「これが原因だから、じゃあ明日からこうしよう!」というように簡単にはいかないのだ。

でも、だからといって、誰もが人任せでいたら、それこそ絶望しかないはず。

「ひとりひとりに何ができるのだろうか」ということを、今一度、男女関わらずすべての大人が考えてほしい。

「誰の責任?」ではなく、ひとりでも多くの人が意識を変えていくこと

冒頭の論点に戻るけれど、何か問題が起きると、ありがちなのは、「誰の責任?」という議論。その責任の所在がどこにあるのかを追及することに躍起になってしまうこと。それが、ニッポン人という国民性からなのか、それとも人間とはそういうものなのかはわからない。

責任の所在を明確にすることは確かに必要なことなのだけれども、そこに躍起になるあまり、責任の所在が明確になったところで力尽きて、もっと大事なその先のことを忘れてしまうのはよくない。……というか、まったく意味がない。

単一の立場の人だけが当事者意識を持ち、ほかが他人事だった場合、問題は解決するだろうか? ……いや、絶対に、しないだろう。

大切なのは、これ以上、同じ悲しみを繰り返さないために各人各所が精一杯のことをすること。誰かひとりが何か特定のことをしたら解決するほど、問題の根は浅くない。

文:松本えつを

◆ 文・ストーリー構成:松本えつを(役名:きのこ)

絵本作家・エッセイスト・コピーライター。2007年、8年間役員をつとめた出版社から独立。2008年、出産後の出血多量で死にかけるも一命をとりとめたことをきっかけに、女性が働きづらい社会を少しでも変えたいと一念発起。以降、ニッポンの女性アーティスト・クリエイターの自立支援を目的とした教育&プラットフォーム事業を立ち上げ、多くの女性たちの声を聞く。2014年、クリエイターを対象としたマンガコンテンツ “ クリエイターあるある in 日影工房 ” を企画・制作。これまでの著書の大部分は大人の女性を対象としたものとなる。代表作に『バンザイ』(サンクチュアリ出版)、『ユメカナバイブル』(ミライカナイブックス)等。

ウーマンクリエイターズカレッジ「絵本の学校」
クリエイターあるある in 日影工房

◆ 絵:ささはらけいこ(役名:もじゃ)

1984年北海道生まれ。金沢美術工芸大学油画専攻卒。東京クリエイターアカデミー(現ウーマンクリエイターズカレッジ)を経て、2010年よりイラストレーター・絵本作家として活動を始める。2014年から “ クリエイターあるある in 日影工房 ” の作画を担当し、「もじゃ」役として出演。2015年におまんじゅうのような子どもを出産し、テンヤワンヤで子育て真っ最中。

ささはらけいこポートフォリオサイト「星ふるモジャモジャの丘」

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